―森に住む手のひらサイズのサンショウウオ―
東京にもいるサンショウウオ
皆さんは、サンショウウオと聞けば、岐阜県、和歌山県や中国山地の山奥に住む大きなサンショウウオを思い浮かべるでしょう。あれはオオサンショウウオと呼ばれ、体長が1mを越すものがある両生類の中でも最も大型の種類です。しかし東京でも八王子市の多摩丘陵より西の丘陵地域の森の中にはサンショウウオはいるのである。それも手のひらサイズで。
この東京にもいるサンショウウオ、「トウキョウサンショウウオ」は福島県から、栃木県・茨城県・千葉県・埼玉県・東京都・神奈川県・などで生息が知られています。
その生息環境は海岸地帯から海抜300mくらいまでの丘陵地帯・低山帯の森林で、日本に生息するサンショウウオの中では一番低地にいる種です。


見られるのは早春だけ
しかしこのサンショウウオ、森林の積もった枯れ葉の下などに生息していて、夜間や曇り、雨の日などに地上にでて昆虫、ミミズなどを食べています。だから森の中で生きたサンショウウオを見つけるのは不可能に近いのです。ではどうしたら見られるのでしょうか。
普段は山の中に住むサンショウウオも、産卵期には水場にでてきて産卵します。その時期は、関東地方南部で2月下旬から4月いっぱい。1頭で1対(2個)のバナナ型の半透明の卵のう(卵の入った袋)を生み、それぞれ一端を枯枝や草の根、石などに付ける。このときならその卵のうと、運がよければ産卵後まだ水場でうろうろしている親を見ることができるでしょう。
1個の卵のう内の卵の数は平均で40個位です。卵は産卵後25日でふか孵化します。幼生のころは水中の微小動物や動物プランクトン等を食べ、また共食いも多く行われます。孵化後、3~4カ月経過すると体長が4センチぐらいになりエラも消え、上陸するようになります。
産卵場所はどんなところ
トウキョウサンショウウオは近縁のカスミサンショウウオと同じく流れの緩やかな水場に産卵する止水性サンショウウオです。だから産卵場所としては流れの強い沢ではなく、湿原のような水の流入はあるが水たまりに近いところが選ばれます。このため小さな溝・用水堀・水田・池沼のようなところでも、産卵してしまいます。しかし卵から孵化した幼生から親になるためには、年間の水温変化が少ない場所で、孵化した幼生が変態を完了するまで生活が続けられる充分な広さと水深が保たれている事が必要です。雨が降った後の側溝の水たまりやあぜ道のわだち後の水たまりなどに産卵しているのを見かけることもありますが、排水溝に流されたり水が干上がったりして、親にまでなるのは不可能でしょう。

トウキョウサンショウウオの卵
では探しに行こう
時期は2月の上旬以降、3月に入った方がいいでしょう。たとえば多摩川上流の日の出町を流れる平井川、ここには流れ込む小さな支流がたくさんあります。この支流を上っていきます。しかしこの支流でいくら目を凝らしても、バナナ状の卵のうを見つけることはできません。
さらにこの支流に流れ込む小さな沢に入って行くのです。道路脇の側溝なども気をつけてみましょう。雨の後、側溝にできた水たまりに卵のうが見つかるときもあります。
山から下ってきた沢が、開けたところで傾斜が緩やかになり湿地状になっているところ、こういったところでは20個から30個あまりの卵のうが見つかることがあります。
トウキョウサンショウウオは生き残れるか
トウキョウサンショウウオが生きていくためには親の生息地である森林と、産卵や幼生の生育のための水たまりなどの止水域、その両方の環境が必要である。開発等により、森林の伐採や小さな沢や湿地の埋め立てが行われるとトウキョウサンショウウオの生活の場は狭められてしまう。
都立大の草野先生からのグループ(トウキョウサンショウウオ研究会)では、「トウキョウサンショウウオ生き残れるか?-東京都多摩地区における生息状況調査報告書-」を出していますが、それによると、東京都内では、その個体数が急激に減少しているということです。
せっかくトウキョウという名前が付けられたこの小さなサンショウウオが東京都内で生き続けることを願いたいものです。