株式会社 ジェプロ・フォーラム

 Japan Environment Project Forum

   
神田川に水辺のない川を作る−地下河川−

神田川は、三鷹市の井の頭公園の池が源流となり、善福寺川や妙正寺川を合流しながら、武蔵野市、杉並区、新宿区など2市13区を流れる延長24・6kmの都内中小河川でも最大規模の一級河川です。この市街地の中を流れる神田川では、都市河川の宿命ともいうべき都市型水害を防ぐため、新しい川がつくられています。それも環7道路の地下奥深くに。

治水機能だけの川:地下河川   河川事業では人々が水辺で憩えるような工夫がなされる一方で、河川の持つ治水機能だけを高めた川づくりも行われています。

都市型水害は、降った雨がコンクリートやアスファルトに阻まれ、地下にしみこむことなく都市河川に流れ込むことによって起きます。このため神田川などは高い堤防で急激に起こる増水に対応しようとしてきました。その結果堤防の上からのぞき込むと、はるか下にわずかに水が流れているのが見えます。堤防が、高所恐怖症の人でなくても怖くなるような高さにまでなっています。これだけの深さがあっても時間雨量50mmを越す豪雨が降ると、流れ込む水量を飲み込むことはできず、川からあふれだしてしまいます。

そこで切り札として考え出されたのが都会の地下に調整池や貯留管を作り、あふれ出た水をためるという計画です。これを「地下河川」といい、杉並区梅里から和泉までの環七の地下に作られている「神田川・環状七号線地下調節地」(環七地下河川)や、環七と山手通りを結ぶ神田川沿いの地下の貯留管「和田弥生幹線」などがそれです。最終的には全長30kmの東京湾にそそぎ込む地下河川になる予定です。

地下の河川に降り立つ  杉並区梅里には調節池(環七地下河川)の入り口があります。エレベーターで地下40〜50mの地下河川に降り立ってみました。直径約13mの巨大なトンネルは懐中電灯の光り程度では全貌をうかがうこともできません。13mの直径は4車線道路に匹敵するといいます。豪雨時には地上の神田川からこの中に激流となった濁水が流れ込むのです。その水量は最大で24万立方メートル、霞ヶ関ビルの約半分の容積にあたるということです。洪水時にためられた水は洪水が収まった後ポンプで神田川にもどされます。2日間あれば調整池は空になるといいます。私が、地下河川に降り立った時は、直径1/4程度の深さまで水がたまっていました。

現在延伸工事が行われていて、これが完成すれば貯水量は54万立方メートルにもなり、善福寺川の水も受け入れることができるということです。

総合的な洪水対策が必要  都市洪水対策としてはこのほか住宅団地の地下に雨水調整池をつくる、道路に降った雨が地下にしみこむように透水性の舗装にする、浸透ますや浸透トレンチで雨水を地下にしみこませるなどがあり、東京都ではこれらを含めて「総合治水対策」といっています。

人々が都市をつくり、そこに多くの人が集中し、各自が快適な生活を目指した結果、都市型洪水という都市に独特な災害を生み出してしまいました。人々が憩うことのないこの水辺のない河川も人々が安全に暮らしていくための一つの代償なのでしょう

 
 

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